お久しぶりです。
前回はMk.13に関しての記事でしたが、今回は早くもMk.14です。
構想と概念
旋盤が活用できるになってからというもの、製作するキャノンの機構は単管式がメインとなり、ずっとΦ50かΦ60の鋼管を利用したキャノンを製作してきました。
それらの構造をいかに洗練させるかということに執着して様々な改良を施してきました。
しかし、そもそも単管式はあくまで従来の二重筒式の工作難易度を下げるために考案した機構であり、威力を追求した際に大きなデメリットが有ります。
それはピストン重量の増大による瞬発力の低下です。
(詳しくはWebサイトの方に記載してありますのでそちらを参考に)
真に威力を追い求めたキャノンの機構は当然ピストンが軽量な二重筒式であるべきであり、その特性上従来のΦ60鋼管以上に大径のパイプが必要になります。
(内部容量を稼ぐため。詳しくはWebサイトの方の二重筒式を参照)
そうした時、メインピストンはより大径の方がより大きな力を受け高速排気が可能になるだろうと考え、その結果以下の様な機構を新たに考案しました。
細かいのでクリックして拡大してご覧ください。
このパイプに合わせたピストンとなると、ピストン後部の空間の体積もばかになりません。
従来ではエアカプラをリリースしたり、AEV等のバルブを用いてこの空間の排気を行っていました。しかしエアカプラでは排気が遅すぎ、そしてAEVではメインピストンを延長する必要があり重量が二倍程度に、また排気の流路を確保する上で、排気しなければならない体積が更に増加してしまうというデメリットがあります。
メインピストン後部の体積を極力小さく、かつその部分の圧縮空気を極力早く排気する。
以上の二点を達成するバルブが大径のエグゾーストキャノンには求められます。
そしてその要件を満たすバルブこそ上図に示した機構なのです。
図から分かる通り、二段式エグゾーストキャノンとも呼べる構造となっており、小型のピストンが後退することにより、メインピストン後部の空間の圧縮空気をパイプのラジアル方向に排出します。
イメージとしては従来のAEVを2つ(メインピストンとAEVピストン(外部に露出したピストン部分))に分離したものと考えても良いです。
一段目、二段目とピストンの役割を分離することで、それぞれを軽量化でき、AEVよりさらなる瞬発力の向上が得られるというわけです。
設計と制作
冒頭ではΦ100を想定と書きましたが、今回考案した機構が動作するかどうか確証が持てなかったため、Φ60で小型版を試作し、機構の実証試験を行うことにしました。
3DCADでモデルにするとこんな感じになりました。
一つの部品に対して計36箇所の穴空け加工が必要という…
非常に面倒ですが気合で加工していきます。
材料のA2017のΦ60丸棒と図面です。バンドソーで切断します。
割出し台をフライス盤に載せて等間隔にラジアル方向の穴あけ加工を施します。
今回の機構はこの割出し台がないと製作は不可能と言えます。
ハイトゲージでケガキをしているところです。ここでも割出し台が活躍します。
ボール盤に割出し台をセットして穴あけ。
正直ボール盤なので精度は得られませんがないよりはマシです。
初めにセンタドリルを用いてくぼみを作り、それからドリルで穴あけを行っています。
タップたてが必要な箇所は20箇所ありました。
右端のフランジを作っていきます。
突切りバイトを用いてOリング溝を掘ります。
精度が良かったのか、このように嵌めこむと固定できます。
精度の確認ができたのでバンドソーで切り出します。切り出した後は切断面を旋盤で整え、ボルト固定用の穴を6箇所等間隔に空けます。
管用タップはかなり気合が必要な作業です。常に垂直が出ているか確認しながら切り込んでいきます。
一段目のバルブユニットが完成しました。
余談ですが、アリエナイ理科ノ工作に掲載されている高圧反応容器のビジュアルに当時非常に憧れており、今回の装置はそれに近いものが有りなんとも言えない満足感と懐かしさをおぼえました。
今回はパイプ側にも排気ポートを設ける必要があります。そのために鋼管にも別にケガキを施し穴あけ加工を施していきます。
こちらも同様に割出し台とフライス盤で穴あけをしていきます。
以上のような作業を経てすべての部品が完成しました。
完成
完成したエグゾーストキャノンMk.14の外観です。
左端が一段目のバルブ部分、右端部分は今回は密閉します。すなわち二段目にあたるメインピストンは今回内蔵しておらず、射撃はできません。
一段目のみの動作確認ができればよいとして今回は省略しました。
我ながらプロトタイプにはもったいないビジュアルだと思っています。やはりフランジ構造はカッコいい。
排気ポートです。この部分からメインピストン後部の圧縮空気を一気に抜き去ります。
今回はΦ10の穴を等間隔に8箇所設けました。穴の面積の合計は従来のエアカプラリリースの時の面積の13倍程度に相当します。
またΦ100鋼管を用いた場合、ノスドリルを用いてΦ15の穴を8箇所ほどになるのではと構想しています。
フランジを外します。
フランジを外すと、内部には衝撃吸収用のゴム板が収められています。
フランジ部分、やっぱりかっこ良い……
内部に収められたピストンです。直径の異なる二種類のジュラコン製ピストンで構成されています。コンパクトに纏めてあるため非常に軽量です。
シリンダー内部にはピストンを止めるための段差とエアーのポートがあります。大学の旋盤は貧弱なため、この部分の中ぐり加工に非常に苦労しました。大学選びのポイントとして、汎用旋盤の有無を確認すべきです。
動作試験
さてようやくですが動作試験です。
以下の動画を御覧ください。
このように排気ポートから内部のピストンが後退したのがなんとなくわかります。
内部機構が動作するのが外部からチラッと見えるのはロマンポイントです。
屋外での試験の様子です。圧力はおよそ0.8MPa、タンク容量は400mlほどです。
改めて説明しておきますが、この射撃音は手元の8つの排気ポートからのみ生じる音であり、先端は閉じたままです。
実際この機構は従来のエグゾーストキャノンのそれと大きく変わらないため、排気性能は小型のエグゾーストキャノンのそれと同等です。爆音も伴う勢いのある排気で、1段目の排気としてはまったく申し分ない性能です。
Φ100キャノンにおけるメインピストン後部の排気しなければならない体積は約600mlであるため、今回のバルブでも、そしてより大型化したものであれば全く問題なくメインピストンを駆動させることが可能と思われます。
以上より今回考案した機構の実証試験は成功ということで、次機Mk.15の構想を練っていきたいところです。
(しかしすでにもう大学四年生になってしまったため先は全く見えません…)
Webサイト UZM Labについて

blogだけでは情報の価値が下がってしまうため、エグゾーストキャノンについて基礎から応用までをまとめたサイトを製作中です。
実は2012年に着手した計画だったのですが、中途半端になってしまっていたため今回改めて力を入れて編集しなおしています。動作機構等のページはすでに完成しているので是非御覧ください。(実は今のところTravel Reportの記事が一番読み応えがあります。京都と秘封好きな方は是非)
UZM Lab
では最後にもう一度Mk.14の写真を載せておきます(カッコいいので)
それでは…(クリックで拡大できますよ…)